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a IESE class of 2014, strategy consultant has focused on emerging economy and innovation management writes about learning from MBA, feeling from daily life, with photography. Twitter : @dsaga


by dsaga
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悩む力

悩む力_e0019200_1122016.jpg悩む力
姜尚中 (著)

姜尚中さんが現代の”悩む”ということについて、夏目漱石とマックス・ウェーバーの思想にヒントを得ながら幾つかの視点で書かれた一冊。悩むことを放棄してはならない、悩みに目をつぶってうわべだけ老成してはならない。自分の存在意義そして自分の人生の意味を確信できるようになるまでは、とことんまで悩み抜けと。

最も印象深かったのは、自我、相互承認について。

自我とは平たく言えば、「自分は何であるのか」を自分自身に問う意識であり「自己意識」。相互承認とはそのままで自分と他者の互いが互いの意味を認め受容れあうこと。自我を保持していくためには他者とのつながりが必要。相互承認のなかでしか、人は生きられない。相互承認によってしか、自我はありえない。

自分だけで「自分が何ものなのか」という問いに答え続けることは極めて難しいということだと解釈している。
はたらくという人生の1側面を見ると、最近の傾向として自分が本当にやりたいこと・やるべきことは何か、今やっていることの意味・価値は何かということを考える人は増えていると思う。そのように考えて、自分の意義がこうでありたいと望んでも、それに重なろうとした時に自分とつながっている他者の存在は切り離すことはできない。

最終的に、”他者に対して”どのような存在だと感じられるか、自分とつながっている(つながりたい)周りの人にどのように貢献したいのかが核であり、その手段として何をしたいのか、どのような仕事をしたいのかという要素が存在するからだ。


自分にも時折見られるのだけど、つい自分というものを周りと切り離して、どうあるべきか、何ができる人間でありたいのか、といったことを考えてしまうところがあるので、それを戒める意味で心に響いた。


幾つかの視点は目次に現れている。幅の広さが面白い。
序章:「今を生きる」悩み
第1章:「私」とは何者か
第2章:世の中すべて「金」なのか
第3章:「知ってるつもり」じゃないか
第4章:「青春」は美しいか
第5章:「信じる者」は救われるか
第6章:何のために「働く」のか
第7章:「変わらぬ愛」はあるか
第8章:なぜ死んではいけないか
終章:老いて「最強」たれ

印象に残った部分をいくつか抜粋する。
P.27
ところで、「自我」とよく混同されるのは「自己チュー」ということです。他人の気持ちや都合におかまいなく、自分の考えを押し通したりする人のことで、そういう人と一緒にいると、「自分のことしか考えていないのか」と疲れてしまいます。
先の「コペルニクス的な転回」を経験する以前の私は、「自己チュー」に凝り固まっていたのではないかと思います。一見するとナイーブな青年のように見えながら、じつは自分の拵えた小さな城から一歩も外に出ず、のぞき穴から外の世界を窺うように、すべての人間を疑ってかかり、ひたすら自分のことだけに熱を上げている、そんななかばナルシスト的な「自己チュー」だったのです。要するに明けても暮れても自分のことだけしか頭になかったのです。
P.36
自我というのは自尊心でもあり、エゴでもありますから、自分を主張したい、守りたい、あるいは否定されたくないという気持ちが強く起こります。しかし、他者の方にも同じように自我があって、やはり、主張したい、守りたい、あるいは否定されたくないのです。そう考えると手も足も出なくなってしまいます。
P.43
中途半端で投げてはいけないと思います。ましてや自我と自己チューを履き違えて、ただの「私」の世界を主張しているようでは、なおさらダメなのです。
P.92
自分が生きている意味を考えたり、人間とは何かを考えたり、人と繋がる方法を本気で考えたり、自分と世界の関係を考えてみたりする。実務的な問題解決を第一とし、万事を淡白にやりすごしている人は、「そんなことマジでやるのは馬鹿馬鹿しい。時間の無駄だ。それこそ意味がない」というでしょう。しかし、そんなふうに生きていたら、たぶん、最終的にはもっと大きな孤独を抱えることになると思います。

あると思います。
by sagad | 2008-06-26 02:18 | Book